カバディの可能性と楽しさを伝えたい!カバディとともに生きる選手

Athlete # 28
カバディ
下川正將

二つの挫折で覚悟を決めたカバディ日本代表



カバディ日本代表キャプテン(2018年現在)の下川正將には、忘れられない屈辱が二つある。一つ目は、大学3年生の時に経験した2009年「U-20アジアジュニア選手権」でのこと。最強国インドとの試合は、見たこともないアクロバティックな技に苦戦し、前半の途中まで1点も取れなかったが、インドのタイムアウト後、なんとインドはわざと日本に点を取らせる作戦に出て、後半で圧勝した。
二つ目は、2010年大学4年生の時に、カバディ界で最も重要かつ権威ある「アジア競技大会」のメンバーに初選抜された時のこと(日本代表選抜は2009年〜)。日本は初の銅メダルを獲得したが、下川はベンチを暖めるだけでほぼ試合には出られなかった。

「ジュニア選手権でのインドの試合は、衝撃として今でも僕の中に残っています。大学卒業後の進路を考える時期に差しかかり、迷いもありましたが、この二つの出来事で僕の腹は決まりましたね」、と下川は眼力のある眼差しで軽快に語る。

もともと格闘技好き。「タックルが自由にできる!」魅力にハマり、のめり込む



下川がカバディの伝統厚い大正大学に入学した当初は、カバディの「カ」の字も知らないほどで、入部勧誘されても最初は見向きもしなかったそうだ。それが、「有名俳優が所属している部」「新歓会が無料」という理由で体験入部し、すっかり魅力にハマったのだ。カバディの守備では、敵が一人で自コートに入って来た際、味方の誰かに「タッチ」しようとするのを防ぎ、なおかつ、自コート内で敵を封じ込めなくてはならない。敵を封じ込める際に、単独でタックルする場合もあれば、集団で囲い込み袋小路にする場合もあるし、そのハイブリッド作戦もあるのだが、下川が最初に魅了されたのはタックルだった。

「もともと格闘技が好きなんですが、格闘技でもないのに『自由にタックルできるんだ!』と血が湧きましたね(笑)。それと、カバディのルールはいたってシンプルなので、『簡単にできそうだ』と思いきや、いざやってみるとできない。この、できそうでできないところが、『次は攻略したい』という気持ちにさせてくれます」

カバディの日本代表は大正大学出身者が多く、大正大学は日本におけるカバディの歴史を作って来た場所でもある。下川は常に日本代表を意識できる場所にいたにも関わらず、最初は「世界の舞台へ」とは考えていなかった。しかし、先輩たちが国際大会で「日の丸」を背負って外国人選手と戦っている姿に憧れていくように。さらに2年生で足首を骨折したため約1年間休養せざるを得ず、カバディへの想いを募らせていった。そしてキャプテンで出場したU-20ジュニアアジア大会では、世界トップとの格差を痛感する負け方を経験する。

また、学生最後のチャンスとして日本代表選考に登ったが、最後で選考漏れ。「これで終わった」と諦めかけるが、父親の「諦めないで続けて欲しい」という言葉に再び奮起したという。
「選考に漏れた後も腐らず最後まで諦めなかった結果、メンバー最終登録の直前でメンバーの入れ替えを発表されました。嬉しさもつかの間、結局僕は控え選手で終わりました。国際試合で活躍できずに選手生命を終わらせることに納得できず、『卒業後もカバディ選手としてやっていく』と覚悟を決めました」

インドプロリーグ、世界舞台の経験から世界と日本との格差を痛感。
レベルアップが今後の課題




下川の就職活動は実に面白い。面接時に「カバディ日本代表」「週3日以上の夕方からの練習は必ず参加」「国際大会の際は数週間休暇を取る」旨を伝え「代わりに他のことで何でも貢献します」と、堂々と交渉していたのだ。当然というべきか、就職活動は難航するが、幸運なことに下川の情熱に共感してくれる経営者にめぐり合い希望は実現した。

「仕事や残業で練習に遅れたり、海外遠征できないのなら就職の意味がないと思ったので、最初から隠さず伝えました。企業からすると『何を言っているんだこの学生は』ということになりますが、僕も真剣ですから。こうして希望が叶ったのは、お世話になった経営者の方や周囲の方々のおかげです」

また、過去に3回、インドのプロリーグに参戦している。インドのプロリーグは、1年の内の3か月間がシーズンとなり、その期間でトップ選手は1千万円以上を稼いでしまうほど、発祥国インドではメジャースポーツなのだ。インド国内でも、選手同士の”しのぎを削る戦い”が繰り広げられ、海外からも実力のある選手がプロリーグ入りを狙っている。

「インドのリーグでは選手の層が厚く、悔しいことにほんの数分間だけ出してもらいましたが点数は1点も獲れていません…。3回目のインドは仕事を辞めて行きましたが、いろいろ悔しさは募るものの、世界トップレベルに身を置く経験ができたことは素晴らしい収穫でした」

世界のカバディ事情を自分の目で見ている下川にとって、日本のカバディ界の課題に対して憂いを抱いている。「今年(2018年)のアジア競技大会で強豪国イランの選手と情報交換した際のことです。国内リーグのあるイランでは大会8か月前から合宿をするそうです。日本は週3日の練習しかできず、それを話すと『それしか練習してないのか?だから弱いんだ』というかのように冷笑されました。練習環境の差は、自国においてカバディがメジャーかマイナーかに寄るところが大きいでしょう。
ですが、不満を言っていても仕方がないですよね。日本の他のマイナースポーツの人たちも悩みは同じはず。そうした状況でも、選手たちの努力で改善している事例もありますから、僕らもやれることはやらないと。個々の努力も必要ですが、横のつながりを強くしてカバディ界全体で動くことが重要でしょう」

「日本代表」「海外プロ選手」への可能性を子ども達に伝えたい



下川の話を聞いていると、マイノリティであることに対する引け目は微塵も感じられない。むしろ、「カバディが魅力的なのは当然」という自信すら感じ、それが小気味良い。
「僕はカバディに関しては『ここまでやっている』という自信があるんです。就職、取り組み方、インドリーグ…。だから、会う人すべてにカバディのことを伝えますし、迫力ある試合動画も見てもらいます。知れば皆さん好きになってくれます。だから、カバディにも自信を持っています」

現在、体験会のほか、小学校でカバディ講習も行い普及活動にも力を入れている。「小学生や中学生に教えるのは楽しいですね!カバディは体育館で行うのが主流になりましたが、外でもできますし道具もいりません。個人技を磨く自己鍛錬と、チームワークも必要になるので自己成長できるスポーツです。そういうことも伝えていきたい。
そして何より、本気でやりたい人には『日本代表になるチャンスがあること』、その先に『インドのプロリーグも目指せる』ということを伝えたい。プロリーグの熱狂的な盛り上がりの中、コートで活躍できる素晴らしさ、高揚感は他では得難いものです。日本代表で表彰台に乗ることを目指していますが、僕自身としてはもう一度インドリーグで戦ってみたい」

「カバディのことになると話が止まらない(苦笑)」という下川の話はさらに続いた。正々堂々と自分の「好き」を貫き通す、”筋の通った生き方”が清々しい。

文=佐藤美の

カバディ/Kabaddi

アスリート名

下川正將

競技名:カバディ

生年月日:1989年3月6日

出身地:アメリカ生まれ(埼玉育ち)

身長・体重:170cm/75kg

血液型:A型

趣味:スポーツ観戦、動物観賞

競技名:カバディ

生年月日:1989年3月6日

出身地:アメリカ生まれ(埼玉育ち)

身長・体重:170cm/75kg

血液型:A型

趣味:スポーツ観戦、動物観賞

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